茶道初心者のためのコラム!分かりやすい棗の歴史と使い方

茶道具
2018.11.11

茶道の世界では一期一会を尊んでおり、亭主としての作法と客としての作法の両方をとても大切にしています。その内、亭主としての作法は「お点前(おてまえ)」と言い、亭主が客にお茶を点てる一連の動作を指します。

亭主は前もって木製漆塗りの蓋物容器にたっぷりの抹茶を入れて準備をしておくのですが、この茶器を棗(なつめ)と呼びます。それでは、この棗とはどのようなものかご紹介していきます。

棗の歴史

棗は最も確実で古い記録は天王寺屋茶会記に残されており、1564年(永禄7年)に津田宗達の茶会で使われました。

現在でこそ棗は薄茶器の総称として薄茶用の茶器として使われていますが、安土桃山時代頃までは、現在の濃茶や薄茶のように明確な区別はありませんでした。
薄茶器として一般化していったのは江戸時代に入ってからで、茶器に残った茶を飲むために薄茶が発生したと考えられています。

棗の種類

棗にはたくさんの形がありますが、千利休が好み、利休の流派を汲んだ茶人達に受け継がれた利休型の棗こそが大棗(おおなつめ)・中棗(ちゅうなつめ)・小棗(しょうなつめ)であり、棗の基本形とされています。

棗は元々、無地黒塗のシンプルなものですが、時代の流れと共に豪華な蒔絵(まきえ)が施されるものも多く出回るようになりました。
蒔絵とは漆で絵付けや色付けした後に、金属の粉を蒔く装飾の事です。

対して、生漆に鉄分を加える事で黒くした黒漆を使い、黒色に仕上げた漆器は黒塗(くろぬり)と呼びます。
下地に朱色を塗り、その上の半透明の透き漆を塗って仕上げたものは溜塗(ためぬり)と言い、時間を経つ程赤みが増していきます。

このように多くの形・塗り方がある棗だからこそ、お点前の時に「棗の御塗りは?」と尋ねられる事があります。
この時は作家名と塗師の名前を応えるのが一般的です。

溜塗六瓢蒔絵中棗

溜塗六瓢蒔絵中棗

棗の使い方

棗に抹茶を入れる時には、直接抹茶を入れてはいけません。
抹茶の粉はとても細かいため、静電気を帯びる事でダマになりやすい性質があるのです。
ダマのまま抹茶を点てると口当たりが悪くなってしまいます。

棗に抹茶を入れるときは、まずは茶こしを使って違う容器にふるい入れましょう。
そして、それを茶杓ですくい、丸く盛るように棗に入れていきます。

棗の保管方法

棗を使う上で最も気を付けなければならない事の一つが保管方法です。
割れやすいので丁寧に扱う事は当たり前ですが、それだけでは済みません。

棗に洗剤の臭いが染みついてしまうので、使用後に洗剤で洗う事はしないでください。

また、湿気に弱いため、お稽古用のプラスチック製のもの以外、水で洗い流す事は厳禁です。
最悪の場合、棗が割れてしまう事があります。
濡れてしまった場合は、すぐ乾いた布でやさしく拭き上げ、しっかり自然乾燥させて下さい。
特に漆塗りについては、濡れてしまうと変色の恐れも出てきますので、水気には十二分に注意を払うようにしましょう。

棗の基本的なお手入れとして、汚れがついた場合や使用後には、帛紗などの柔らかい布や懐紙、ティッシュペーパーで拭くようにして下さい。
棗の蓋や外側についた軽い細かい抹茶を払うのに、組小羽根を用いるのもよいでしょう。
汚れが目立つ場合は、お湯に浸してよく絞った布で拭いて、さらに乾いた布で拭き上げしてください。

高価な棗については、できる限り帛紗などの柔らかい布や懐紙で優しく丁寧に拭き上げるのがおススメです。

少しでも抹茶が残っているとカビや臭いの原因になるため、面倒でも手間をかけて綺麗にする事が非常に重要です。
また、綺麗にした後は陰干しして完全に乾燥させてから、木箱などに保管するようにしましょう。

一言で「棗」と言っても、形状や素材、塗り方の違いなど、本当に様々な棗があります。
蒔絵・沈金などの加飾を施してある、とても高価なものも。
棗によって、ぴったりの保管方法も変わってきます。
それぞれの棗にふさわしい保管方法をとり、大切に使用してくださいね。

 

棗(なつめ)

 

 

 2018.11.11

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