懐石道具(かいせきどうぐ)

2018.6.1

用語集テンプレ

茶の湯の場で供される料理を懐石といいます。
古くは「会席」とも記されましたが、「南方録」で初めて「懐石」の文字が使われれたとされ、修行中の禅僧が、空腹をしのぐために温石を懐に入れたことから、この字があてられたと考えられています。
したがって、本来は珍味佳肴を供するのではなく、旬の材料を使ってわずかな量を出すことを旨としていました。
利休の教えに「振舞はごまめの汁にえびなます 亭主給仕をすればすむなり」(「長闇堂記」)とあります。
たとえ簡素な献立であっても亭主自らが給仕をすることが、なによりの馳走であり、もてなしの究極であることを理解すべきでしょう。

さて、その懐席を供する際に用いられる器を懐石道具と総称します。
もとは、禅院で使われる朱塗の器にならったもので、同色同意匠のものが原則とされます。
膳(折敷(おしき))をはじめ、飯椀、汁椀、楪子(ちやつ)、平から飯器(ひらからはんき)、湯斗(ゆとう)にいたるまで、一揃いになっています。
この形式のものは、今でも精進料理を供する茶事などで用いられています。
やがて、楪子が陶磁器などの向付に変わり、焼物などがさまざまな器に盛って出され、また、木地八寸が用いられるなどの変遷を経て、現在見るような形式に整っていったとされています。
ただし、飯椀、汁椀、煮物椀(椀盛)、小吸物椀(箸洗い)、飯器、杓子、湯斗、湯の子すくい、それに丸盆、脇引は同意匠のものを用います。

懐石道具が同色同意匠で揃えられるのに対して、向付や焼物を盛る器、預け鉢、進肴や香物の器などは変化に富んでいます。
とりわけ陶磁器には、唐物、高麗物をはじめ、和物でも京焼から各地の国焼、無釉のものから色絵の鮮やかなものまで多彩で、料理を味わうことはもとより、器を拝見するもの懐石をいただくときの楽しみの一つです。

懐石の器には、それぞれ約束に応じて各種の箸が使われます。
客には、赤杉でできた両細の「利休箸」を折敷にのせて出します。
青竹で作られた菜箸には、いろいろの種類があります。
焼物と八寸に用いる中節、預け鉢に添える元節、両細は香物に使います。
他に、赤杉でできた矢筈箸を添える場合もあります。
いずれの箸も、使う前に水を含ませておくのが約束です。
これも、清浄第一を旨とする亭主の心配りの表れといえましょう。

作者 :

商品URL :

よろしければシェアをお願いします!!

  • Instagram
  • tumblr

pagetop