茶道における掛け軸の季節に応じた使い分けと工夫について
- 茶道具
- 2018.11.15
掛け軸は床の間のある和室ではよく見かける室内装飾の一種ですが、茶道の世界においても茶室内の空間を演出するための道具として重要視されています。
今回は、茶席に掛け軸を掛ける意味やその具体的な演出法について紹介していきます。
とくに季節感を出す工夫に関しては、「書」すなわち文字のみが書かれた掛け軸を使った手法についても解説していきます。
茶席で好まれる掛け軸とは
茶席を設ける際、亭主は茶室内にさまざまな道具を配しますが、そうした道具の中の1つに掛け軸があります。
掛け軸は、書や画を裂(きれ)・紙などで表装した美術品です。
茶室の床の間に掛けて飾りますが、和室の装飾品として茶室以外にも広く使われています。
茶道においては、掛け軸のことを特に「掛物(かけもの)」と呼ぶこともあります。といっても、茶道専用の特別な掛け軸があるわけではなく、亭主の趣向に応じてさまざまな種類のものが用いられます。
ただ、一般的な傾向としては、風景画や人物画などの絵画に比べると書の方が好まれる傾向にあります。
よく用いられるのは墨蹟という、禅宗の僧侶が書いた書です。
そのほかにも、能書家によって書かれた筆跡、古い手紙である消息なども用いられます。
掛け軸を用いる意味
茶道において、掛け軸を用いる意味は二つあります。
一つは、茶席の趣旨や目的、あるいは亭主の心構えなどを示すというもの。
そしてもう一つは、季節感の演出です。
このうち前者では、茶席をどのような考えで設けたのか、どんな気持ちで過ごしてほしいかといった、客に対する亭主のメッセージがこめられます。
禅語をしたためた墨蹟が用いられることが多く、「日日是好日」「和敬清寂」など、茶道の精神を象徴するような言葉が好まれます。
掛け軸 「和敬静寂」
一方、後者の季節感については、我が国における多くの伝統芸能や文学と同様に、四季折々の自然や風物を鑑賞することに重点が置かれます。
画であればもちろんですが、書であっても言葉の選び方によって季節を感じさせるよう演出を施します。
掛け軸で季節感を出す方法
書による掛け軸を季節に応じてどのように使い分けるのかというと、これには特別な決まりはありません。
ただ、伝統的な手法として広く行われているものはあります。
まずは、季節を直接感じさせる掛け軸を選ぶという手法です。たとえば春であれば「花」、初夏であれば「新緑」、夏であれば「白雲」といった具合に、それぞれの時候に合った言葉が入っている書を掛けることで、見る者に季節を感じさせます。
そして、特定の言葉から季節感を連想させるという手法。
たとえば、夏の終わりであれば「涼」、年末であれば「無事」といった言葉の入った書を掛け、それらの言葉から喚起されるイメージによって間接的に季節感を演出します。
千紀園スタッフ 2018.11.15
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